【本】『鍵のない夢を見る』
先日、直木賞を受賞した『鍵のない夢を見る』を読みました。
辻村深月さんの短編集。
読み始めたら、やはり、面白い。
ほぼ一気に読了しました。
ただ、並べ方がちょっと気になったんですが、
これは後で述べます。
5本の短編が収録されていて、主人公は全員女性。
5本の中で、一番面白かったのは、
「芹葉大学の夢と殺人」。
(あくまでも、私の主観ですからね)
これ、ミステリ仕立てになっていて、
被害者の女性の側から殺人事件を描いているのですが、
犯人の造形が極めてうまい、と申しましょうか、
こういう人、いるだろうなあ、近くにいたら、いやだなあ、
と思わせます。
そして、ラストにちょっとした変化もあって、
面白く(いやいや、読後感はよくないのですが)読めました。
ラストの「君本家の誘拐」。
これも、終盤の展開で「おお!」と思いました。
赤ちゃんの誘拐事件を母親の立場から描いているのですが、
いやあ、これは男性作家は書けないでしょう。
書こうと思えば書けますが、とんでもない人と思われるのではないか、と。
「美弥谷団地の逃亡者」は、タイトルから考えて逃亡者の話なんだよね、
と思いながら読み進めたのですが、話の展開がどうにもわからず、
終盤の謎解きで「なるほど!」と思ったのでした。
終盤の一気の展開、独特のリズムだなあと思います。
「石蕗南地区の放火」も、怖い話です。
ラスト2ページほどの、主人公の心中を思いやると、
じわじわっと怖くなります。
で、実は最初においてある作品「仁志野町の泥棒」だけは、
正直、いまひとつと申しましょうか、私にはピンときませんでした。
もちろん、これ、あくまでも私の主観ですよ。
ただ、他の作品の方が、どう考えても面白いと思うんですが…。
これを最初に置いているのが、ちょっと驚きでした。
短編集って、最初の方に面白いのを持ってくるか、
あるいは発表順か、どちらかだと思うのですが、
巻末のクレジットを見ると、発表順ではないらしいのです。
とすると、辻村さん(あるいは編集者さん)は、
この作品がかなり面白い、と思っているのでしょうね。
ううむ。
男と女では、印象が違うのかなあ。
女性が読むと、凄く面白い作品なのかも。
ちょっと気になります。
あと、この本のカバーデザイン。面白いです。
薄い紙になっていて、表紙のイラストが透けて見えるんです。
これ、本のテーマを表現しているんだろうなあ。
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・『本当は怖い昭和30年代』ランクイン。何かあったのかな。
・『ヒーローを待っていても世界は変わらない』朝日新聞書評効果か。
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