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2021年3月11日 (木)

小説の力はすごい、と改めて思った『羊は安らかに草を食み』

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『羊は安らかに草を食み」自社の小説です。

私、ノンフィクションの編集をやっているので読むのもそっち系が多く、

小説はあまり読まないんですが、たまには読みます。

この本は、朝日新聞に先月載った大矢博子さんの書評がとても面白く、

読まなくちゃ、と思ったのです。

 

主役は高齢の女性3人。

益恵86歳、アイ80歳、富士子77歳。

施設に入ることになった益恵さんの「最後の旅」に、

3人で出かける、という話です。

 

益恵さんがかつて暮らした土地を巡る旅、つまり現在を描きつつ、

同時に、満州から引き揚げてきた益恵さんの過去も描かれます。

 

この引き揚げの描写が圧倒的です。

文字通り凄惨な体験であり、読むのが辛くなるんですが、

それでも読まざるを得ない、読み続けてしまう迫力があります。

小説の力ってすごい、と思います。

 

しかし、最後まで読んで思ったのですが、

著者の宇佐美まことさんが描きたかったのは、

実はそこではないかも、という気がします。

あ、もちろんこれは、私の勝手な憶測ですよ。

 

戦争のために子供がどれだけ悲惨な思いをしたか。

それももちろん描きたかったはずですが、

実は脇役のように思っていたアイさんと富士子さんが、

小説の終盤で、ある「決断」をします。

(う。ネタバレか…?)

 

あくまでも推測なんですが、著者が書きたかったのはそっちかも。

 

普通に書くと、ものすごく荒唐無稽なんですよ、その決断。

しかし、益恵さんの壮絶な半生と彼女の行動力を読んでいると、

ふたりの決断に非常に説得力があるのです。

益恵さんの描写によってアイさん富士子さんの決断に説得力が出てくる。

そこもポイントなんですけどね。

 

読んでいて、荒唐無稽ではなく、たしかにこれしかないなあ。

と思わざるを得ません。

ここで改めて、小説の力はすごい、と思ったのでした。

 

350ページ以上のボリュームですが、

読み始めると小説世界に引き込まれます。

むしろ、読み終わるのがもったいない。

久しぶりにそう感じた1冊でした。

小説の力って、すごい。

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