編集者は順番のストックを作っておくといいと思います、という話。
昔、文庫編集部で小説を担当していたことがあります。
新人、あるいは新人に近い方に、
文庫書き下ろしのミステリーをお願いすることもありました。
そんなときによく言っていたのが、
「殺人シーンは早めに出してくださいね」
派手な場面をできるだけ前の方に持ってくる。
それで読者の興味を引いて、読んでもらう。
読者との信頼関係が築けている作家さんなら、
少々面白くないシーン、地味なシーンが続いても、
信頼して読み進めてくれると思います。
しかし、そういう関係ができていない新人の場合は、
面白いシーン、興味を引きそうなシーンをできるだけ前の方に持ってきて、
読者に「面白そう」と思ってもらう。
要するに、話し方の順番が大事。
突然何をいい出したかといいますと、
最近読んだ新書2冊、どちらも話し方の順番が気になったのです。
どちらも、面白いこと、大事なことが書かれてるんですよ。
でも、そこに到達するまでが長い。長過ぎる。
著者さんにしてみたら、この順番が大事、ということだと思いますが、
ミステリーに例えるならば、登場人物の説明にばかりページを割いて、
殺人事件がなかなか起きない感じなのです。
私だったら少々強引でも殺人シーンを冒頭において、
そこから回想シーンとして本来の出だしにつなげるなあ。
つまり、どういう順番で見せるかは、
編集者がアドバイスすべきだと思うんですよね。
特に、読者との関係がまだ築けていないであろう新人著者さんの場合は。
もちろん、順番を変えてもおかしくないようにするんですから、
お原稿をきっちり読み込んで、あれこれ考える必要がありますが。
一番もったいないのは、面白いシーンに辿り着く前に、
読むのをやめられることじゃないですか。
で、その人が「この本、面白くないよ」と周囲の人に言ったとしたら、
マイナスのクチコミが広がってしまう。
どういう順番が面白いのか。
それを勉強するのには、実は映画がいいんじゃないかと思います。
映画の冒頭、特にヒットしている映画の冒頭がどうなっているか、
いろいろ見ておいて、「順番のストック」を自分なりに作っておくといいと思います。
幻想的なシーンから始める、
夢から始める、
わけのわからないシーンから始める、
もちろん時系列通りのものもあると思います。
いろんなパターンを知っておくことが大事、と思います。
写真は本文と一切関係なく、
最近食べたポテトチップス。美味。
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