獅子文六『コーヒーと恋愛』が面白い。
数年前になりますが、「いま、獅子文六が熱い」的な新聞記事を読んだ記憶があります。
獅子文六。
小説家です。
1969年に亡くなってます。
私が生まれて数年後のことなんですね。
名前は知ってますが、読んだことはありませんでした。
ちくま文庫が獅子文六の小説を復刊している、そして売れている、
というのが上記の記事の主旨だったと思います。
獅子文六原作の「えっちゃん」をNHKがドラマ化したのが2017年なので、
その頃かもしれません。だとしたら6年前か。
先日、八重洲ブックセンターに行って文庫を買おうと思ったのですが、
「獅子文六の小説を読んでみよう」と思って購入したのが、
『コーヒーと恋愛』
最初に単行本として世に出たのが1963年。
ちょうど私が生まれた年です。
読売新聞に連載していたそうです。
で、読んでみると、これがとても面白い。びっくりするくらい。
まず、文体が全然古くない。読んでいてストレスがない。
会話が多めですが、これが実に生き生きとしてます。
次に、主人公の悩みに共感できる。古くない。
テレビで活躍している役者なんですが、自分の才能にいまひとつ自信を持っていない。
年下との夫の関係もちょっとギクシャクしている。
この辺り、今の読者も非常に共感できると思うんですよね。
主人公が得意なのは、コーヒーを淹れること。とても美味いコーヒーなんです。
ところが、ある朝、夫から「今朝のコーヒーは美味しくない」と言われる。
そこから始まるんですね、この小説。この導入部も魅力的。
そして、ちくま文庫側の熱量も熱いんですよ。
手書き文字の帯にぐっと引き込まれます。
新聞広告が今より影響力あったんだろうなあ、とか、
結婚したら女性は仕事を辞めるのが普通、とか、
さすがに今の感覚とはちょっと異なるところがありますが、
それはそれとして、当時の風俗として興味深いです。
というわけで、獅子文六の他の小説も読みたくなってます。
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