「伏線回収に翻弄」というフレーズに偽りなし! 『お梅は次こそ呪いたい』はすごいよ
あ、まだこちらに書いてなかったですね、『お梅は次こそ呪いたい』のこと。
定年まで勤めていた祥伝社から文庫書下ろしで第1弾が出まして、
それを読んだらとても面白かった。
後輩へのメモ
あ、まだこちらに書いてなかったですね、『お梅は次こそ呪いたい』のこと。
定年まで勤めていた祥伝社から文庫書下ろしで第1弾が出まして、
それを読んだらとても面白かった。
先月読んだ中で印象的だったのが、
『「ウルトラQ」「ウルトラマン」全67作撮影秘話』
タイトル長い!
サブタイトルに「ヒロインの記憶」とあるように、
ウルトラシリーズ最初期2本のヒロインだった桜井浩子さんが、
当時の思い出を振り返る、というものです。
この手のものとしては、「ウルトラセブン」のアンヌ隊員だった
ひし美ゆり子さん(当時は「菱見百合子」)の回想記がありますが、
桜井さんのは初めて。
桜井さんはウルトラシリーズ最初の2本である「Q」と「マン」に出演されてますので、
シリーズ草創期の熱気を知る点でも、非常に貴重です。
今だったら明らかに労基法違反と思われる状況で、
ひたすら頑張っていたスタッフ。
特撮シーンに負けないように演技を頑張った出演陣。
東宝のベテラン俳優たちがゲスト出演していたんですねえ。
有名な話なのかも、ですが、「ウルトラQ」は、
放送開始時に撮影はほぼ終わっていたようです。
たしか、「水戸黄門」もそうだったそうですが。
撮影が終わってから放送順を考えたそうで、
撮影順と放送順、だいぶ異なるそうです。
怪獣が出てくる作品を早めに放送しよう、
ということになったため、です。
それにしても、桜井さんの記憶力はすごいです。
細かなことや、共演者との会話も覚えていらっしゃる。
カラー放送に向けて髪の毛の色をどうするか、というエピソードが印象的です。
50年以上前の話なのに、よほど強烈な日々だったんだなあ。
そしてその番組を見ていた自分が、いま、それを読めるという幸せ。
編集者の視点で言うと、
怪獣の写真があまり出てこないのが、ちょっと不思議。
入れたくなるはずなんだけどなあ。
この週末に読了しました、『京都なぞとき散歩』(柏井壽著)
出金時にチェックしているパブラインによると、じわっと着実に売れてるらしい、
気になっていたのです。
平日ほぼ毎朝チェックしている上野駅構内の書店さんにも、
ずっと置いてあるし。
(新幹線で京都に行く人向けなのかも)
というわけで購入し、読んでみました。
京都の本、昔から需要があるのです。
祥伝社時代、高野澄先生の『京都の謎』シリーズを担当してました。
もともとは新書で、途中から文庫書下ろしになってシリーズ。
10冊ほど出したと思いますが、どれも、ロングセラーになってました。
というわけで、この本も売れているみたいです。
「なぜ東寺はあるのに西寺はないのか」
「なぜ左京が右で右京が左なのか」
「なぜ京うどんは腰抜けなのか」
といった謎を解説しています。
面白いのは、それぞれの場所でおススメの食べ物(料理屋やお菓子)を紹介していること。
名所と食べ物がシームレスなんですね。興味深い。
文章がとても読みやすいので、一気に読了できました。
ビックリしたのは、というか、祥伝社だったら絶対に地図を入れると思うのですが、
この本には地図が一つも入ってません。
必要な人はスマホで検索するから、入れなくていいよね。
という判断なのでしょうか。
だとすると、古い本づくりになれている私には、
かなりの衝撃です。
純粋にエッセイとして楽しむのならば、地図はなくてもいいのかも。
私が京都の本を担当することになったら、
さて、地図を入れるかな、入れないかな。
どっちがいいのかな。
といったことをあれこれ考えておりました。
祥伝社時代にお世話になった川上徹也さんの新刊『キャッチコピーのつくり方』。
先日、一気に読了しました。
新刊のオビに印刷するキャッチコピーを作るのが仕事なので、非常に勉強になりました。
編集者として30年本を作ってきたので、自分なりのキャッチコピーのつくり方があるのですが、
それはどうしても自己流になっているわけで。
この本を読んで、初心に戻って勉強しなくては、と改めて思いました。
この本、ちょっと変わっていて、まえがきを書いているのは担当編集者さん。
その中に「何度も何度も読むことで血肉化されていくはずです」
「きっと10年後、20年後も色褪せない本になると」
というフレーズが出てきます。
読了して、「たしかに!」と思いました。
本書は、コピーライターとして様々な分野で活躍されている川上さんが、
ご自身の考え方とプロセスを、簡潔にまとめたもの。
150ページほどです。ですので、これも本書に出てくるフレーズですが、
「流し読みすれば30分もかからず読めるかも」というボリューム。
しかし、中身はかなり深いのです。
第一線で活躍している人が、自身の考え方とプロセスを1冊にまとめる。
プロが自分の商売道具を公開しているわけで、これはかなり貴重ですよ。
まずは全体を一気読み。
その後は本棚の手に取りやすいところに置いておいて、
キャッチコピーを作る際にパラパラめくる。
そういう使い方がいいと思います。
「架空の顧客像(ペルソナ)を設定するのは、時間がかかるわりに益が少ない」
「読み手に『自分に関係がある』と思ってもらう」
「人は自分が損をする情報に敏感です」
という記述が印象に残りました。
貫井徳郎さんの『ひとつの祖国』を読みました。
ハードカバーで500ページ以上あります。手にするとなかなかの迫力です。
というわけで、読む前はちょっと躊躇したんですが、
読み始めるとページをめくらせる力が強い。
リーダビリティというやつですね。
これが凄いのです。このあとどうなるの? の連続です。
そもそも、設定がかなり特殊。SFというか、パラレルワールドというのか、
戦後日本が東西に分割統治されていた、という世界なのです。
ベルリンの壁崩壊でドイツが統一したように、日本も統一。
しかし依然として強烈な経済格差が東西にはあり(ちなみに西が栄えてます)
不満分子が東日本独立を画策する。
そういう状態の日本が舞台です。
この設定が納得できないと、あるいはぴんと来ないとつらいですが、
逆に、この設定さえ納得出来たら、後は極上のエンタメが待ってます。
テロリスト集団に巻き込まれる主人公の心理描写。
連続殺人事件の犯人捜し。
突然始まる逃走劇。
「なんで?」と「なるほど!」のバランスが絶妙で、
もう少しだけ読もう、もうちょっとだけ読もう、となります。
そして最終的には、人はなぜ争うのか、どうしたらそこから脱することができるのか、
というかなり深遠な問題を考えることに。
深いわあ。
残り100ページを切ったあたりから、
「この小説、どうやって決着するのかな」と思っていたら、
納得のラストになりました。
と同時に、残り100ページを切ったあたりから、
魅力的な人物がどんどん増えます。
かれらの活躍をもっと読みたい、という気持ちになりました。
続編希望! 無理かなあ。
いろんな書店で平積みされてる垣内尚文さんの新刊、
『このプリン、いま食べるか? ガマンするか?』
カバーのプリンのイラストが凄く印象的です。
実はプリンについての言及はそれほど多くないのですが、
本文でもプリンのイラストが効果的に使われていて、
とても手に取りやすい印象です。
今回のテーマは「時間」。
『パン屋ではおにぎりを売れ』では考え方、
『バナナの魅力を100文字で伝えてください』では伝え方。
毎回、食べ物がカバーにドーンとイラストで入っているのが特徴です。
ただし、前2冊がかんき出版だったのに対して、
今回は飛鳥新社から。
他社でもアプローチできるのかあ。
時間術とか時短ノウハウというよりは、
時間についていの考え方の本です。
(時短ノウハウについても言及してますが)
「幸福の時間」をいかに増やすか。そのための考え方が説かれています。
「やるも選択、やらぬも選択。どちらを選んでも後悔しない」
「人生は立てた時間でできている」
「自分のスケジュールに幸福の時間を先に入れる」
「1日を24時間でなく16時間で考えてみる」
「もしこれが人生最後の〇〇だとしたら。と考える」
…印象的なフレーズがかなりたくさん。
定年後の私は幸福の時間が増えてると思うのですが、
手帳の使い方がまだまだ甘いなあ、と思います。
編集者視点で興味深かったのは、上記の通り今回、版元が違うんだということに加え、
各章のはじまり。
これは現物を見ていただくのが一番わかりやすいですが、見開きの穴埋め問題になってます。
その賞を読み終わると、すべて埋められるようになってますし、
結果的にその賞のまとめ的な内容になる。
これはすごくいいと思いました。
いろんな書店で平積みされてる垣内尚文さんの新刊、
『このプリン、いま食べるか? ガマンするか?』
カバーのプリンのイラストが凄く印象的です。
実はプリンについての言及はそれほど多くないのですが、
本文でもプリンのイラストが効果的に使われていて、
とても手に取りやすい印象です。
今回のテーマは「時間」。
『パン屋ではおにぎりを売れ』では考え方、
『バナナの魅力を100文字で伝えてください』では伝え方。
毎回、食べ物がカバーにドーンとイラストで入っているのが特徴です。
ただし、前2冊がかんき出版だったのに対して、
今回は飛鳥新社から。
他社でもアプローチできるのかあ。
時間術とか時短ノウハウというよりは、
時間についていの考え方の本です。
(時短ノウハウについても言及してますが)
「幸福の時間」をいかに増やすか。そのための考え方が説かれています。
「やるも選択、やらぬも選択。どちらを選んでも後悔しない」
「人生は立てた時間でできている」
「自分のスケジュールに幸福の時間を先に入れる」
「1日を24時間でなく16時間で考えてみる」
「もしこれが人生最後の〇〇だとしたら。と考える」
…印象的なフレーズがかなりたくさん。
定年後の私は幸福の時間が増えてると思うのですが、
手帳の使い方がまだまだ甘いなあ、と思います。
編集者視点で興味深かったのは、上記の通り今回、版元が違うんだということに加え、
各章のはじまり。
これは現物を見ていただくのが一番わかりやすいですが、見開きの穴埋め問題になってます。
その賞を読み終わると、すべて埋められるようになってますし、
結果的にその賞のまとめ的な内容になる。
これはすごくいいと思いました。
昨年だったか、名探偵ポアロが登場する小説は30冊ちょっとしかないと知り、
それならば1冊目から読んでみましょうかね、ということで読んでおります。
で、先日読了したのが『アクロイド殺し』
おそらく、「意外な犯人」として世界的に有名な古典です。
読んだことなくても、犯人が誰か、知っている人は多いのではないかと思います。
というか、犯人が誰か、全く知らずに読み始めることができる人は、幸せだわ。
私、若い頃に読んでまして、再読にあたって犯人が誰か最初からわかってましたが、
それでもやっぱり面白い。麻雀が出てくるシーンなんかあったのね。
ポアロが出てくるミステリーとして3冊目で、かなり初期なんですね。
長編小説としても6冊めだったそうです。
その段階でこれだけの大技を思いつき、形にしたクリスティは、
やはりただものではないです。
3冊目、というところがポイントで、
ポアロが出てくるミステリーはヘイスティングズ(ホームズにおけるワトソン)が
記述する、ということを読者が認識しているからこそ、面白いんですよね、
このミステリー。
読み終わって、解説の笠井潔さんの解説を読んで痺れました。
この小説の凄さは「意外な犯人」にあるのではなく、
別のところにあるのだという指摘。
それが何かを書いたらネタバレなので書けないですが、
「なるほど!」と納得しました。
目からウロコと申しましょうか。
古典的ミステリーの見方が変わりました。
この解説もすごい!
ここのところ、フェイスブックライブの記事多めになっております。
井下田久幸さん新刊の販促の一環ということで。
その一方で、新書も編集しております。
というか、新書編集がメインなのです、私の立場的には。
というわけで、昨日見本本ができたのが『何が教師を壊すのか』朝日新聞取材班著です
朝日新聞の連載「いま先生は」を再編集して1冊にまとめました。
オビに大きく「現場はここまで疲弊している」と入れたんですが、
これは、お原稿を読んだ私の素直な感想です。
学校の先生、忙しいというのは何となく承知していましたが、
想像以上に大変なんですね。
部活指導、モンスターペアレンツ、教員不足問題。
それらの根本にある「定額働かせ放題」を可能にしている給特法の実態。
私が衝撃を受けたのは、
「妊娠は夏以降に。保護者の心証が悪くなる時期は避けて」と管理職に言われた先生のお話。
そんなわけで、読んでいるとだんだん気が重くなるのですが、
工夫と話し合いを重ねて働きやすい職場にした実例も最後の方に出てきて、
かすかな希望を感じます。
というわけで、4月12日発売の『何が教師を壊すのか』
新聞連載ならではの、「学校のリアル」がわかる1冊です。
(今回はまるまる宣伝回でした)
言語学者・川添愛さんの『世にもあいまいなことばの秘密』を読みました。
正月の東京新聞に川添さんと俵万智さんの対談記事が載ってまして、
これがとても面白かったのです。
昨年12月の新刊です。売れているようです。
帯のイラストがかなりインパクトあります。
きのこ先生というらしい。
「この先生きのこるには」という文章を、
「この先、生き残るには」ではなく、「この先生、きのこるには」と誤読し、
「きのこるとは?」と悩んだ川添さんの実体験をイラストにしたものです。
本書はこのように、川添さんご本人が誤読した、あるいは誤読するだろうなと思った、
実際の文章を紹介し、なぜ誤読を招くのか、つまりなぜあいまいなのか、
解明した1冊です。
こういう文法チックな本はとても好きです。
しかも、ガチガチの文法書ではないので、専門用がほぼ出てこないのがありがたい。
「私には双子の妹がいます」
「政府の女性を応援する政策」
「2日、5日、8日の午後が空いてます」
これらのあいまいさと、あいまいにならないための工夫。
読み進むうちに、日本語に強くなった気がしてきます。
きのこ先生のようなイラストだけでなく、
ところどころに問題を置いて読者に考えさせるという工夫もあり、
この手の本を面白く読ませる編集の点でも、勉強になりました。
川添さんは「日本語はあいまいだからダメ」と言っているわけではなく、
むしろあいまいだから面白い、悪いものではない、
という立場。それも嬉しいことでした。
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