本の記録

後輩へのメモ

2022年9月22日 (木)

「ルポ 誰が国語力を殺すのか」における絶望と希望

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ネットで話題になっていた「ルポ 誰が国語力を殺すのか」をようやく読了。

300ページ以上あり、手にした時のずっしり感はなかなかのものです。

読むのにちょっと躊躇する分厚さですが、

読み始めると、とても面白い。

 

子供たちの国語力がどんなことになっているのか、

その現状が前半で語られ、

後半は、それをどう再生するかについての現状、

さらに最後の2章で、小学校と中学校の実例を紹介しています。

 

語彙が貧困だとよくないよなあ、

というのは漠然と感じていることで、

例えば、自分の怒りを「むかつく」の一語で、

相手への憎悪を「殺す」の一語でしか表現できない、

というのはかなりまずい、と思うのです。

 

怒りにも、憎しみにも、段階があるわけで、

もっと繊細な表現があるはず。

例えば、雨に「五月雨」「にわか雨」「豪雨」

みたいにいくつもの言い方があるように。

 

しかし、現実には、語彙が貧困な子供がかなり多いようです。

それはシンプルに残念ですし、

相手との間にトラブルが起きる可能性も高いです。

 

という現状と、ではどうするかという現状を描いているわけですから、

面白くないわけがないのです。

 

最後の2章に出てくる学校の例は、

「すごいなあ」「ほんとですか」レベルなんですよね。

こういう学校に行っている子供たちは幸せだわ。

 

というわけで、いろいろ勉強になりました。

 

ただ、ちょっと気になったのは、最初に出てくる

「ごんぎつね」の実例。

 

ごんぎつねの葬式のシーンを、

今の子供たちは誤読している、という話なんですが、

これは国語力の問題というより、

昔の葬式のことを知らない、知識不足の問題なのでは?

 

ただ、誰もが知っている「ごんぎつね」だからこそ、

インパクトがあるんですよね。

私がこの本のことを知ったのも、

ネットでの「ごんぎつね」議論でしたから。

 

 

 

2022年9月 1日 (木)

『文にあたる』を読んで自分の仕事ぶりをしみじみと振り返る

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ツイッターで見かけて気になっていた本をようやく読了しました。

牟田郁子さんの『文にあたる』。

 

校正の仕事をしている牟田さんが、校正という仕事について語った本です。

編集者が編集の仕事を語る本は、これまでそこそこ読んできましたが、

校正者が校正の仕事を語る本、初めて読んだ気がします。

皆無ではないと思いますが、そんなには出てないように思います。

しかし、これが非常に面白いのです。

 

もちろん、私が書籍編集者なので、興味のある分野、

というのはあると思いますが、

仕事本として、ぐいぐい引き込まれます。

 

トルツメとかナリユキといった校正用語はほとんど出てきません。

それよりも、仕事に真面目に取り組むとはどういうことか、

そこの部分がきちんと語られているので、

読みながら自分の仕事ぶりを振り返りたくなる。

責任持って仕事をするって、奥が深いなあ。

私の仕事っぷり、まだまだなってないや。

 

牟田さんは校正者になった時、

定年間近のベテラン校正者と組んだそうです。

 

社内に校正者が常駐している出版社、存在することは知ってましたが、

ここまできちんとした組織なのか、と読んでいてびっくりしました。

 

そして、ちょっと嬉しかったのは、定年間近でも優秀な校正者は存在する、ということ。

私自身が定年近くなっているので、自分の校正能力に自信がなくなっていたのですが

(なにしろ目が悪くなっているので)

年齢とは関係ないらしいぞ、というのは嬉しい。

まあ、それ以前に校正者としての基礎体力ができてませんが。

 

最初の方に

「(校正に)費やされた時間は建築物の筋交いのように見えないところで文章を強靭にする」

という一文があって、痺れました。

そうなんですよねえ、1冊の本ができるまでには、

直接間接に膨大な時間がかかるのですが、

それぞれが、その本を強靭にしているんだよなあ。

自分の仕事、もっと頑張ろうっと。

 

それにしても。

あとがきで牟田さんもお書きになってますが、

この本を校正した人は大変だったろうなあ。

校正の本に誤植があったら、かなりつらいですから。

 

 

 

2022年8月30日 (火)

青山美智子さんの新作『いつもの木曜日』はやっぱり面白かった!

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久しぶりにブログ更新してます。

今月は、あまり書けてないなあ。

その話は改めて書こうと思いますが、

今回は青山美智子さんの新作の話。

 

『いつもの木曜日』です。

タイトルとカバーで、わかる人はわかりますが、

この本、青山さんのデビュー作『木曜日にはココアを』の続編です。

 

『木曜日にはココアを』は、ある喫茶店のお客さんたちの話を描いた短編集。

こちらは、そのお客さんたちの、前日譚。

(その後を描いた作品もありますが)

映画でいうとエピソードゼロ、ですね。

 

青山さんの小説の魅力は、文章の読みやすさ、読後感の良さ(明るく元気になれる!)、

そして短編同士のつながり。

 

この短編の脇役が別の短編の主役になったり、

ある短編でちらっと語られていたことが、別の短編では大きな事件になっていたり。

人間は誰もが主役なんだなあ、脇役だけの人生なんてないよ、

という気になるんですよね。

 

というわけで『木曜日にはココアを」は、

作品間の横のつながりが絶妙に面白いのですが、

今回は前作との関係なので、前作と本書の縦のつながりが面白い。

 

そして、感動的な日の前後も大事な日々なんだ、

という気持ちになってくる。

だから、元気になれるんだろうなあ。

 

あ、前作を読んでなくても面白いですよ。

 

本書を含め、ポプラ社から出ている青山さんの本のカバーには、

ミニチュア作家・田中達也さんの作品が使われてます。

今回もそうなんですが、巻末には青山さんと田中さんのミニチュアも。

青山さん、よく似てます。

 

もう一点、興味深いのは、最後に出てくる著作一覧。

宝島社の作品だけでなく、他社本も写真入りで紹介してます。

この本がデビュー5周年の記念作だから、だと思いますが、

そうはいってもなかなかできることではありません。

 

青山さん、担当編集者さんたちに人気があるんだろうなあ、

と推察しました。

 

というわけで、いろいろ楽しみがありますが、

日頃のあれこれを忘れて小説世界に没入したい、

そしてできれば明日からの活力をもらいたい。

そういうリクエストに応える1冊です、今回も。

 

 

 

2022年8月23日 (火)

『その本は』は人に話したくなる本でした。

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今、売れてます、『その本は』。

又吉直樹さんとヨシタケシンスケさんの共著、

という点がまず、すごいです。

この二人に書いてもらうという発想が素晴らしいし、

それを形にしたのがもっと素晴らしい。

 

王様の命を受けた男二人(イラストが又吉さんとヨシタケさんぽい)が

世界を旅して、世界の珍しい本の話を王様にする、というのが基本構造です。

 

又吉さんパートとヨシタケさんパートが分かれてます。

又吉さんの小説にヨシタケさんがイラストを添える、

という形ではないんですね。

 

珍しい本の紹介ということで、最初は大喜利のような、

そんなわけあるか! と突っ込みたくなるような本がいろいろ出てきます。

 

双子の本とか、輪郭がぼんやりしている本とか。

 

それがだんだんと、本をめぐる話になっていき、

「そういうことだったのかあ」と感動する話が増えてきます。

特に、岬と春の本の話は印象的だったなあ。(又吉さんパート)

評判が悪い本の話も、グッときました。(ヨシタケさんパート)

 

大喜利からここまで。

振り幅が大きいです。

 

で、最後は「そうだったのかあ」という展開に。

 

本好きには、とても面白い本だと思います。

装丁も凝っていて、面白いです。

 

 

2022年8月18日 (木)

『本屋図鑑』の丁寧な本づくりが印象的でした。

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最近読んで面白かった、『本屋図鑑」

岡山の書店員いまがわゆいさんによる、コミックエッセイです。

ツイッターのタイムラインに、以前、この本のことがたくさん流れていて、

出版関係の間で話題になっているんだな、というのは認識していたのですが、

先日、近くのリアル書店で目にして、

「あ、これだ」と即座に購入しました。

 

書店の仕事を追体験してみましょう、

というコンセプトで、朝から夜まで、

時系列に沿って本屋さんのお仕事が描かれます。

仕事をどういう順番に見せるか、という並べ方の問題がありますが、

時系列というのは、この本においては大正解な気がします。

4コマ漫画の登場人物が皆さん可愛く、本好きで、

グイグイ読めます。

 

コラムもたくさん入っていて、

書店に関するお仕事の詳しい知識が得られます。

 

すbらしいなあと思ったのは、丁寧なつくり。

基本的に4コマ漫画で進んでいくんですが、

それぞれに見出しがあり、

4コマの下に感想的なメモも。

 

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これをほぼすべての4コマにつけてるわけで、

丁寧だなあ。

 

著者のいまがわさん、本と本屋さんのお仕事が

大好きなんだろうなあ、というのがビシビシ伝わってきます。

ですので、読後感がとてもいい。

 

その一方で、出版社や取次に非常に好意的で、

出版社の社員としてはいろいろ申し訳ないです。

マイナス感情もお持ちだと思うのですが・・・。

 

本好きの人には、是非読んでいただきたい1冊です。

2022年8月16日 (火)

『この場所、何かがおかしい』は予想通り面白い本でした。

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うわ。今月になってから、更新できてませんねえ。

出社前に書くようにしているんですが、

二度寝したり、ワクチンの副反応で熱出たり。

今日は久しぶりに書けます。

 

先日読んで面白かったのが、『この場所、何かがおかしい』。

ツイッターのタイムラインでこの本のカバーを見かけたんですが、

まずそのインパクトにやられました。

なんだこれは?

聖徳太子像なんです。

このカバーから、面白そうというオーラがガンガン伝わってきます。

こういうカバーを作らないとなあ、と自分の仕事を思わず振り返ったのでした。

 

で、読んでみたらやっぱり面白い。

そもそも私、田中聡先生の『地図から消えた東京遺産』を担当させていただいたこともあり、

この手の本が大好きなんですよ。

 

本書の肩書きは「非日常旅エッセイ」。

日本各地の変な場所を取材しています。

 

観光地として有名な清里も、

今はだいぶ印象が変わってるんだなあ。

 

脱力気味の文章。

なんだこれ、という写真。

こんな場所があるんだという驚き。

三位一体で楽しみたい1冊です。

 

最後に訪れているのが、この本の版元である

エクスナレッジさん、というのも、

とても洒落てます。

地下2階が怖いらしい。

 

 

 

2022年7月26日 (火)

青山美智子さん『マイ・プレゼント』はさくっと読めるけど味わいはすごく深い。

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青山美智子さんの新刊『マイ・プレゼント』を拝読しました。

こういう本なのかあ、と驚きました。とても面白い企画です。

 

青山さんの前作『赤と青のエスキース』のカバーを担当したU-kaさん。

この人の絵に、青山さんのショートショートを組み合わせているのです。

 

48編入っていますが、ほぼ全てが見開きで終わる、

文字通りのショートショート。

よくあるフレーズという気もしますが「大人の絵本」ですね。

どこからでもサッと読めます。

それでいて、「あ、この気持ちわかる」「これ、自分のことだわ」という思いに。

ひとつ読み終わるたびに、いろいろ考えてしまいます。面白い。

 

後ろの方に出てくる「昔ずっと覗いていられた」が

私は特に好きです。

 

絵に合わせた文字の配置になっているので、

縦組みだけでなく横組みが出てくるのはもちろん、

時には丸く組んだり、折り返しになっていたり。

これは本文デザインがかなり大変だったのではないか、

と思います。校正も大変だったろうなあ。

 

こういう企画、弊社で出せるかなあどうかなあ、

と思いながら読み進めていたら、

オビ裏に続編「ユア・プレゼント」をこの冬に出します、

という予告が。版元のPHPさん、すごいなあ。

さらにすごいのは、発売1週間で重版が決まったとのことで。

本当に素晴らしい。

 

 

 

 

 

2022年7月20日 (水)

三遊亭兼好『立ち噺』がかなり面白い。

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三遊亭兼好師匠の「立ち噺」。

師匠の独演会のオープニングトークを活字化したものです。

これがとっても面白い。

師匠の目の付け所がいいんだろうなあ。

そして、それを話す順番が絶妙なのです。

新聞ネタとしては古いものもありますが、

「こういう話、あったなあ」と思い出しつつ、

笑ってしまう。

 

主に移動中、つまり地下鉄の中で読みましたが、

時々、声を出して笑いました。

危険です。

頭の中で、師匠の甲高い声で脳内再生されるんですよね。

ありがたいことに、無料で動画も見ることができます。

とてもコスパがいいです。

 

というわけでとても気に入ってますが、

毎回入っている立ち噺の写真が、妙に黒い。

それが気になるわあ。

 

ちなみに、上記の動画、見る手順の説明がとても具体的で、親切。

おそらく、こういうことに慣れてない、年齢高めの人たちが

メイン読者層なのではないか、と思われます。

 

書籍編集者として気になったのは、部数です。

この本は、兼好師匠のファンと、

これからファンになる人たちが読者だと思うんですよね。

たぶん、ですが、そして大変失礼ながら、

5万とか10万といった数字ではないと思うんです。

猛烈に多いわけでないと思うのです。

どのくらいの数字なんだろうなあ。

 

独演会などで長期的に売れる、

という特性はありますね。

そちらが重要なのかも。

 

 

 

 

 

2022年7月13日 (水)

『ニューヨークが教えてくれた“私だけ”の英語』が英語学習の壁をぐっと低くしてくれます。

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このところ急に忙しくなってきたのですが、

そんな中、「ニューヨークが教えてくれた“私だけ”の英語』。

ようやく読了できました。

面白い本なので、一気に読了したかったのですが。

 

著者の岡田光世さんは、読売新聞アメリカ現地記者を経て、

現在は作家にしてエッセイスト。

ニューヨーク在住とのこと。

『ニューヨークの魔法』シリーズで知られています。

 

このシリーズ、人気があるんですね。

新刊が出るたびにネット書店アマゾンの上位に来ますし、

私の知り合いも好きだとのこと。

 

本書は、そんな岡田さんの、英語との付き合い方を書いています。

前半は高校以降、英語とどう接し、いかにして英語を仕事にしてきたか。

後半は英語をどう学ぶか。

ご自身のニューヨークでの実体験がかなり描かれてますので、

エッセイとしても面白いです。

 

6章の「英語が好きになる13の方法」は、

英語学習の具体的なヒントがたくさん出てきます。

Siriって英語学習に使えるんですね。

 

英語も話し方が9割、という指摘は、なるほどと思います。

 

英語学習に苦労しているのは日本人だけじゃない。

中学の英語の教科書に勝るものはない。

この2つの指摘は、心強いなあ。

英語学習の壁がぐっと低くなる気がします。

 

岡田さんの他の本も読んでみなくちゃ。

 

 

 

2022年6月21日 (火)

ヨシタケシンスケさんの本2冊にうわっと思いニヤッとした件。

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先日、「ヨシタケシンスケ展かもしれない」会場で買った、

ヨシタケさんの本2冊。

読了しました。面白かったなあ。

『ものは言いよう』と『あるかしら書店」。

 

前者は、雑誌MOEに掲載した記事をまとめたもので、

オビのキャッチコピーによれば

「絵本作家ヨシタケシンスケ完全読本」

 

自作解説や影響を受けた本の紹介があって、

とても興味深いです。

 

編集者として「うわっ」と思ったエピソードがありまして、

一番初めの絵本のオファーでは

「何を描いてもいいです」

と言われて、できなかった。

別の編集者から

「リンゴをいろいろな視点から見てみたら、というお題に答えてください」

と言われて、デビュー作『りんごかもしれない』が描けたそうです。

 

これ、お題を出せばいいんだという話ではなくて、

作家によって、お題を出したほうがいい人なのか、

自由に書いてもらったほうがいい人なのか、

編集者が見極めないとダメですよね、

という話だと思うんですよ。

編集者としてうわっと思ったのでした。

 

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『あるかしら書店」は、ある書店のお話。

「〜についての本、あるかしら?」

とお客さんに聞かれると、

「ありますよ」と店の奥から出してくれる。

その本がどれもふざけていて、実に良いです。

 

で、最後に出てくるお客さんのリクエスト。

これにだけ、店主が

「それはまだ無いですー」

と答えます。

 

どんなリクエストだったか書いてしまうとネタバレだから、

ここには書きませんが、

編集者として、ここでも、

うわっと思い、そしてニヤッとしたのでした。

そうなのよ、その本だけはまだ無いんですよ。

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